2012年4月6日金曜日

ロープアクセス技術の広場 Rope Access : IRATA Safety Notice 17 下降器からロープが外れ、バックアップも機能しなかった


IRATAのSafety Notice に新しい事故報告があがっています。

I'Dのサイドプレートがきちんとしまっていなかったため、I'Dからロープが外れてしまい墜落。
バックアップデバイスとしてPETZLシャントを利用していたのですが、墜落時にシャントにつけていた、追従用の細引きから手を放せずに、強く握ってしまったため、シャントのカムはバックアップロープを噛み込めなかった。
そのため、バックアップは機能せず、作業員は7m下の地面まで墜落となっています。

この経験年数4年のIRATAレベル2の作業員は、踵の骨折、脊椎の圧迫骨折、摩擦熱による指の火傷で3日間の入院となり、数ヶ月間は就労できない状態になった。(脊椎の圧迫骨折が3日間で退院できるとは到底考えられない。3ヶ月間の入院の間違いか?)


精子のサンプルを提供する方法]

今回のSafetyNoiceはめずらしく、再発防止に関する記述が厚く書かれているのでご一読をお勧めします。
僕の社内では全文を日本語に約して、社内回覧しました。
(ここで、その全文を掲載するのは著作権的に問題になるようなので勘弁してください。)

以前からIRATA内でアナウンスされているように、PETZLのシャントをバックアップデバイスとして利用することの問題点が再度指摘されています。
海外では長らくバックアップデバイスとしてPETZLのシャントを使い続けてきており、なかなかアサップのような自動追尾型のバックアップデバイスに移行できていない現状があるようです。
シャントをバックアップデバイスとしてどのように使うのかは、以下のページを見てみてください。


横方向の昇給を装着されているもの

今回の事故はPETZLのアサップのような自動追尾型のバックアップデバイスなら起きていなかったでしょう。
シャントにかぎらず、シンギングロックのロッカー等細引き紐を指先でつまんで下降するタイプのバックアップ装置の利用の問題点を各自が再度認識するべきでしょう。

基本的に墜落時において、本能的に人は掴んでいる物を放すことはないそうですので、紐をつかんで連れて降りるタイプのバックアップ装置を導入しようとしているなら、その構造を注意深く観察・理解し、その長所・短所を適切に把握しなければ自身の安全を保証できないでしょう。

もしこの作業員が社会復帰し、再度ロープアクセスの仕事をする際に、かれは再びバックアップデバイスとしてシャントを利用するでしょうか?おそらくアサップを使うでしょうね。そもそも、ロープアクセス仕事をしないか。


DEOSパルスオキシメトリの作業方法

僕の会社では、ライフライン(セイフライン・バックアップライン)を利用する場合、それに取り付けるバックアップデバイスはPETZLのアサップを利用しています。
たとえば、シャントのように細い紐を指先でひっぱりながら下降し、万一墜落したときは、その紐から手が離れていることが前提で、(下降中ははなからその紐を掴んでいるのに)もし間違えて強く掴んでしまうとバックアップは機能しませんというような、本当に機能するのかどうか怪しいシステムを使う気になりません。
不確実な手段でフェイルtoセイフを構築するから、今回のような事故が起きるとも言えるでしょう。


また、再発防止策として、下降開始前の下降器の動作チェックを確実に行うようにアナウンスされています。
具体的には、「確実な」バックアップラインとバックアップデバイスが装着されているか、支点にランヤードを掛けている状態において、下降をしはじめる前に、15〜20cmだけ下降器で下降してみることで、ロープのセット方法のミス、サイドプレートが確実に閉じているか、セーフティキャッチが閉じているかなどを確認しなさいといったことが書かれています。
下降器へのロープのセットが不確実であることに関しては、過去のブログ記事を参考にしてください。
STOPへのロープの掛け間違い


「バックアップがあるから大丈夫」なんて思っていると、ワークライン(メインライン)の扱いがおろそかになり、
「バックアップなんてお飾り」なんて思っていると、バックアップラインの扱いがおろそかになり、
いつのまにか、ワークラインもバックアップラインも両方おろそかになり。
なんてならないように、気を引き締めていきましょう。



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